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ベトナムの消費者嗜好を最新データで解説|価値重視の購買行動とEC・健康志向

ベトナムの消費者嗜好を最新データで解説|価値重視の購買行動とEC・健康志向

ベトナムで商品を売りたい、現地で新しいサービスを始めたい。そう考えたとき、まず押さえておきたいのが、現地の人たちが何を基準にモノを選んでいるかです。人口は約1億230万人、2026年1〜9月の実質GDP成長率は前年同期比9.01%。数字だけを見ると「伸び盛りの市場だから、品質の良い日本製品なら売れるだろう」と考えたくなりますが、実際のベトナムの消費者はかなりシビアです。

本記事では、日本貿易振興機構(ジェトロ)が2026年10月に公表した特集レポートを軸に、ベトナム統計局が2026年7月に公表した2025年の生活水準調査、PwCの消費者意識調査、現地EC市場の2026年上半期データなどを組み合わせて、ベトナムの消費者嗜好の「いま」を整理しました。進出や商品企画の前に、全体像をつかむ材料としてお使いください。

ベトナムの消費者嗜好を形づくる経済環境と生活意識

嗜好の変化を理解するには、まず財布の中身と将来への見通しを知っておく必要があります。所得は着実に伸びている一方で、物価や景気への警戒感も根強い。この「期待」と「慎重さ」の同居が、ベトナムの消費者嗜好の土台になっています。

1人当たりGDP5,000ドル突破で広がるベトナム消費者の購買力

ベトナム統計局によると、2025年の実質GDP成長率は8.02%となり、1人当たりGDPは初めて5,000ドルを超えました。同年の小売売上高・消費者サービス収入も前年比9.2%増と堅調です。

将来への見通しも明るく、英国の調査会社ユーロモニター・インターナショナルの調査では「将来は今より経済的に豊かになる」と答えた人がベトナムでは60%にのぼり、世界平均の49%を大きく上回りました。

成長期待と生活防衛が同居するベトナム消費者の本音

ただし、財布のひもがゆるんでいるわけではありません。PwCが2025年10月に公表した消費者調査(ベトナム回答者517人)では、48%が「今後12カ月の最大のリスクは経済の不安定性」と答えています。また57%が「冷蔵庫や戸棚の食品を使い切ってから買い足す」と回答しており、アジア太平洋平均の47%より10ポイント高い数字です。

ジェトロはこうした消費者を「価値納得型」と名付けています。セールやクーポンはしっかり使う。でも、安いという理由だけでは買わない。品質、機能、安全性、保証まで確かめて、払う金額に見合う価値があるかを判断する、という姿勢です。現地の日系企業からも「高いものは良いもの、という感覚はあるが、単に高ければ売れるわけではない」という声が出ています。

表で見るベトナム消費市場の基礎情報

ベトナムの消費者嗜好を読み解く前提として、消費市場の規模と購買力にかかわるデータをまとめました。

項目データ
人口約1億235万人(2025年)
面積33万2,144km²(日本の約0.88倍)
年齢中央値33.4歳(2025年)
言語ベトナム語
宗教仏教が中心。
ほかにカトリック、カオダイ教、ホアハオ教など。
1人当たりGDP5,026ドル(2025年)
実質GDP成長率8.02%(2025年)、9.01%(2026年1〜9月)
1人当たり月間平均所得約600万ドン(2025年、都市部 約740万ドン・農村部 約520万ドン)
小売売上高・消費者サービス収入前年比9.2%増(2025年)
EC市場規模約385億ドル(2025年)

この表から見えてくるのは、ベトナムが「若くて伸び盛りだけれど、一人ひとりの財布にはまだ余裕がない国」だということです。

人口は1億人を超え、年齢中央値は33.4歳と、日本(約49歳)よりおよそ15歳若い国です。経済は年8〜9%のペースで成長しており、小売やECの市場も年々大きくなっています。市場の規模と勢いという点では、東南アジアでもとくに注目度の高い国のひとつです。

ただ、1人当たりの月間平均所得は約600万ドン(約240ドル)で、日本と比べればまだ大きな差があります。今後の暮らしが良くなると期待しながらも、手元のお金は限られている。だからこそ、ベトナムの消費者は「安いもの」ではなく「払う金額に見合うもの」を慎重に選びます。この堅実さが、ベトナムの消費者嗜好を理解するうえでの出発点になります。

ベトナム消費者の購買チャネルと嗜好の変化

「何を買うか」と同じくらい大きく変わっているのが「どこで、どうやって買うか」です。EC市場は急拡大し、SNSが購買の入り口になりました。とはいえ、実店舗の役割がなくなったわけではありません。

ベトナムのEC市場の急拡大とTikTok Shopの台頭

ベトナム電子商取引協会(VECOM)によると、EC市場規模は2015年の約40億ドルから2025年には約385億ドルへと拡大し、2025年の成長率は前年比21%を記録しました。小売全体に占めるECの比率も、2011年の1%未満から2025年には約19%まで上がり、2030年には28%に達すると予測されています。

勢力図の変化も見逃せません。2022年に73.0%のシェアを握っていたShopeeは2025年に56.0%へ、同じく2022年に20.0%あったLazadaはわずか2.0%まで縮小しました。代わりに伸びたのが、ショート動画やライブ配信で商品を見せるTikTok Shopで、2024年の29.0%から2025年には41.3%まで拡大しました(いずれもEC分析企業Metricの集計)。

SNSの影響力も大きく、ジェトロの調査ではベトナムの消費者の71%がSNS経由で商品を買った経験があり、91%がSNS広告、58%がインフルエンサーの発信に購入を左右されています。

ベトナム主要ECプラットフォームのシェア推移

正規品志向が強いベトナム消費者と「Shop Mall」への集中

ECが広がるほど、消費者は「これは本物か」を気にするようになっています。ベトナムでは以前から模倣品や並行輸入品が問題になっており、販売者が増えたECではなおさら見分けがつきにくいからです。ユーロモニターの調査では、63%が「完全に信頼できるブランドからしか買わない」と答えました。

この傾向は数字にもはっきり表れています。Metricによると、2026年上半期のShopee・TikTok Shop・Lazada・Tikiの4サイト合計の売上は291兆6,000億ドンで、前年同期比44.11%増でした。販売点数の伸び(13.67%増)を大きく上回っており、1点あたりの単価が上がっていることがわかります。

実際、100万ドンを超える商品が売上全体の18.2%を占めるようになりました。とくに売上が集まっているのが、ブランドの公式認定店「Shop Mall」です。Shopee・Lazada・TikTok Shopの3サイトで見ると、Shop Mallは店舗数のわずか2.79%なのに、売上の34.2%を占めました。前年同期と比べて店舗数は6%減ったのに、売上は54%増えています。

ECにおける公式認定店「Shop Mall」の比率(2026年上半期)

店舗とECを行き来するベトナム消費者の「非直線的な購買」

ではECだけ整えればよいかというと、そう単純でもありません。ジェトロが現地の日系企業に聞き取ったところ、SNSや動画で商品を知り、ECで価格やレビューを比べ、高額品や使い心地が大事なものは店舗で実物を確かめてから買う、という流れが多いそうです。そして2回目以降はまたオンラインで買う。いわゆるOMO(Online Merges with Offline)型の行動です。

ユーロモニターの調査でも、今後日常の活動がオンラインに移ると考える人は24%にとどまり、44%は対面の活動が増えると見込んでいます。店頭で商品を見ながら、スマートフォンで同じ商品のEC価格や他店の価格をすぐに調べる消費者が多い、という日系小売企業の指摘もあります。

ベトナム消費者の「非直線的な購買」の流れ

ベトナムの消費者嗜好を表す3つのトレンド

ここからは、ベトナムの消費者が商品を選ぶときに何を重視しているのかを、健康、美容、環境という3つの切り口から見ていきます。いずれも一時的な流行ではなく、所得の向上や都市化と結びついた変化です。

健康を「将来への投資」と捉えるベトナム消費者

ユーロモニターの調査では、59%が食品を選ぶ際に健康的な原材料を重視し、33%がストレス軽減や心の健康のための活動に定期的に取り組んでいます。PwCの調査でも、74%が超加工食品や農薬に強い懸念を示しており、アジア太平洋平均の68%を上回りました。

背景にあるのは、都市化や工業化に伴う大気汚染や水質への不安です。ある日系メーカーによると、水質への関心はとくに高く、多くの家庭が浄水器を使っているうえ、比較的高価なアルカリイオン整水器の需要も伸びているそうです。買い物の場面では、パッケージの表だけでなく裏面の成分表示や原産地まで確かめる人が増えました。ジェトロはこれを「成分・安全・信頼確認型」と呼んでいます。

ベトナムの美容市場の成長と韓国ブランドの存在感

美容も健康と同じく「将来の自分への投資」として捉えられるようになっています。ジェトロの市場調査によると、ベトナムのスキンケア市場は2025〜2030年に年平均約16%、メイクアップ市場は約12%の成長が見込まれ、ヘルス&ビューティー分野のEC市場は2025年の約12億ドルから2030年には約28億ドルに広がる見通しです。2026年上半期のEC売上でも、美容カテゴリーが全カテゴリーの中で首位でした。

若年層向けのコスメでは、価格の手ごろさとトレンド性を備えた韓国ブランドが強く、K-POPや韓国ドラマから美容トレンドを取り入れる行動が定着しつつあります。

気候変動に敏感なベトナム消費者のエシカルな選択

環境への意識の高さも、ベトナムの消費者の特徴です。PwCの調査では、気候変動に懸念を感じている人は96%で、アジア太平洋平均の86%を10ポイント上回りました。また70%が、食品ロスを減らすために必要な分だけ買うと答えています。

テクノロジーの取り入れ方も積極的です。48%が心の健康のためにヘルスケアアプリを使い、63%が生成AIを使って自分の体のデータに合わせた運動プログラムをつくっていると回答しました。

ベトナム消費者の意識とアジア太平洋平均の比較

地域と世代で異なるベトナムの消費者嗜好

南北に長いベトナムでは、地域によって所得も気質も違います。さらに少子高齢化という人口構成の変化も加わり、ひとくくりに「ベトナムの消費者」とは語りにくくなっています。

所得格差から見るベトナム消費者の地域差

ベトナム統計局が2026年7月に公表した2025年の住民生活水準調査によると、全国の1人当たり月間平均所得は約600万ドンで、前年比10.9%増でした。2025年7月に63あった省・市が34に再編されてから初めての集計で、首位は首都ハノイ市(837.4万ドン)、2位が商都ホーチミン市(806.4万ドン)です。

都市部は約740万ドン、農村部は約520万ドン。農村部の伸び(14.5%増)が都市部(6.7%増)を上回り、格差は前年の約1.5倍から約1.42倍に縮まりました。

1人当たり月間平均所得(2025年・上位5省市)

気質の違いも語られています。ジェトロの聞き取りでは、ホーチミンはお金を使う楽しみを重視する消費意欲の旺盛な市場、ハノイは貯蓄を重視し購買には慎重だが品質へのこだわりが強い市場とされています。南部は新商品への反応が早く、北部は定着に時間がかかるものの、一度選んだブランドへの忠誠度が高いという指摘もありました。

少子高齢化がベトナム消費者の価値観を変える

国連によると、2025年時点の年齢中央値は33.4歳と、まだ若い国です。それでも合計特殊出生率は2024年に過去最低の1.91まで下がり、2025年も1.93と、人口を維持できる水準とされる2.1を下回ったままです。子どもの数が減るぶん教育への投資は熱を帯び、学歴だけでなく音楽や体験、感情知能(EQ)を育てる学びへと関心が広がっているそうです。

2035年前後には65歳以上の割合が14%を超える「高齢社会」に入ると推計されています。共働きと核家族化が進む都市部では、外部の介護サービスを使うことも親孝行のひとつと考える価値観が芽生えつつあります。

ベトナムの消費者嗜好に合わせた日本企業の打ち手

ここまでのデータを踏まえると、日本企業がベトナム市場で考えるべきポイントは大きく2つに絞れます。どちらも「良いものを並べれば売れる」という発想から一歩踏み出すことが前提です。

「日本製」頼みをやめ、ベトナム消費者の生活課題への効果を示す

ある日系小売企業は、日本ブランドの品質や安全性への信頼は高いものの「日本製だから売れる市場ではなくなった」と指摘しています。水質、大気汚染、紫外線、肌や髪の悩みなど、現地の人が日々感じている課題に対して、自社の商品が何をどう解決するのか。それを成分や原産地、使い方とあわせて具体的に伝えることが求められています。

ベトナム消費者の購買動線に合わせた公式流通と顧客接点づくり

正規品を求める声の高まりを考えると、Shop Mallのような公式チャネルでの販売は信頼の土台になります。そのうえで、ショート動画やライブ配信で興味を持ってもらい、店舗で試し、オンラインで買い続けてもらう導線をつくることが大切です。ショート動画の9割以上を社内で制作し、スタッフ自らライブ配信を行っている日系メーカーもあります。南北の気質差を踏まえ、地域ごとに価格設定や伝え方を調整する視点も欠かせません。

ベトナムの消費者嗜好の市場調査はヒアリングプラットフォームのミルミーをご活用ください

公的統計や公開レポートを読めば、市場の大きな流れはつかめます。けれども、自社の商品が現地の人に受け入れられるのか、どんな言葉なら響くのか、価格は高すぎないか。こうした問いの答えは、ベトナムで暮らす人に直接聞いてみないとわかりません。

ベトナムの消費者の本音を、必要なときにすぐ聞ける「ミルミー」

ミルミー(millme)は、タイ・ベトナム・インドネシアの現地モニターから生活者の声を集め、海外進出や新商品企画の判断に生かせるヒアリングプラットフォームです。アンケートを作ったことがなくても、AIが質問案や選択肢づくりをサポートしてくれるため、「何を聞けばいいかわからない」という段階からでも始められます。

固定費0円で、1万円で50名から回答を得られるプランのほか、月額10万円で国内・3カ国へのアンケートを定期的に実施できるプランもあります。理由や背景まで深く知りたいときは、動画や音声で現地の声を集めるAI現地インタビューも利用できます。

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出典

ジェトロ「ベトナム(1)ベトナム消費市場、成熟化する消費者像とデジタル消費」(2026年10月8日)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2026/1001/ec6579792c8494fd.html

ジェトロ「ベトナム(2)ベトナムEC市場の拡大と多様化する消費者像」(2026年10月9日)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2026/1001/30ca5b297e757f9a.html

ジェトロ「ベトナム(3)ベトナムで日常化する健康・美容消費」(2026年10月9日)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2026/1001/87d79a2d09724f0c.html

ジェトロ ビジネス短信「ベトナム、1~9月GDP成長率は前年同期比9.0%超」(2026年10月13日)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/10/be8fc9f1bddfd308.html

ダンチ(Dân trí)「Hà Nội đứng đầu cả nước về mức thu nhập bình quân đầu người」(2026年7月13日)
https://dantri.com.vn/lao-dong-viec-lam/ha-noi-dung-dau-ca-nuoc-ve-muc-thu-nhap-binh-quan-dau-nguoi-20260713160052668.htm

人民代表新聞(Đại biểu Nhân dân)「Thu nhập bình quân của người Việt đạt 6 triệu đồng/tháng」(2026年7月13日)
https://daibieunhandan.vn/thu-nhap-binh-quan-cua-nguoi-viet-dat-6-trieu-dong-thang-10423417.html

国際協力銀行(JBIC)「ベトナムの投資環境」第23章 最近のトピックス
https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment/image/inv_vietnam_23.pdf

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