コラム
タイの消費者トレンド2026|最新統計で読み解く4つの変化とビジネスへの活かし方
タイへの進出や、タイ向け商品の販売を考えるとき、最初に押さえておきたいのが現地の消費者トレンドです。「親日的で、SNSが好きな国」というイメージだけで判断すで起きている変化を見誤りかねません。
2026年のタイでは、物価高と家計債務の重さから財布のひもが固くなる一方で、動画を見ながらスマートフォンからその場で買い物をする行動が当たり前になっています。節約と衝動買いが、同じ一人の消費者の中に共存しているのが今のタイの現状です。
本記事では、タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)やタイ国家統計局、日本貿易振興機構(JETRO)などが公表している最新データをもとに、タイの消費者トレンドを4つの視点から整理します。最後に、統計だけでは見えない「現地の声」を事業の判断に取り入れる方法も紹介します。
タイの消費者トレンドを読む前に押さえたいタイの基礎情報
トレンドの話に入る前に、タイという国の基本的な姿を確認しておきましょう。人口や宗教、通貨といった基礎情報は、商品設計や販売方法を考えるときの前提になります。
タイの基礎データ一覧

基礎情報から見えるタイの消費者の特徴
タイの人口は約6,600万人で、東南アジアでも大きな消費市場のひとつです。一方で、後述するように少子高齢化が進み、人口は減少の局面に入っています。
国民の9割以上が仏教徒である一方、イスラム教徒も約5%います。食品や化粧品を販売する場合は、地域や対象によってハラールへの配慮が必要になる場面もあります。
タイには約6,000社の日系企業が進出し、約7万人の日本人が暮らしています。日本の商品や食文化に触れる機会が多い分、タイの消費者の目は肥えており、「日本製」というだけでは選ばれにくくなっている点は、この後のトレンドとも重なります。
タイの消費者トレンドを左右する経済環境
消費者の行動を読み解く前に、家計を取り巻く経済環境を確認しておきましょう。タイの個人消費は、成長の鈍化と家計債務という2つの制約の中で動いています。
タイの個人消費は2026年に入り減速
NESDCによると、2026年4〜6月期の実質GDP成長率は前年同期比1.9%で、1〜3月期の2.8%から減速しました。
個人消費の伸びも3.3%から1.9%へと鈍り、ホテルや飲食、交通といったサービスへの支出、燃料や自動車への支出が落ち込んでいます。中東情勢の緊迫という外からの逆風も重なったことが原因の一つです。
NESDCは2026年通年の成長率を2.0〜2.5%(中央値2.2%)、個人消費の伸びを2.6%と見込んでいます。2025年の個人消費は2.7%増だったため、急ブレーキとまではいかないものの、力強さを欠く状態が続きそうです。
消費者の気持ちも揺れています。タイ商工会議所大学(UTCC)が発表する消費者信頼感指数は、2026年9月に52.1となり、4カ月ぶりに低下しました。洪水の被害や生活費の上昇が重しになったと報じられています。
タイの家計債務は比率が下がっても消費の重しに
もう一つの制約が家計債務です。ロイター通信の報道によれば、タイの家計債務は2026年6月末時点でGDP比85.2%でした。比率は下がってきているものの、アジアでもっとも高い水準のひとつであることに変わりはありません。同報道は、この債務の重さがタイ経済を潜在成長率(2.7%)の水準に戻しにくくしているとも伝えています。
注意したいのは、比率の低下が「家計が楽になった」ことを意味しない点です。在タイ日本国大使館の資料でも、家計債務は減少傾向にあるものの高水準で、金融機関の貸し出し態度は厳しいままだと整理されています。借りたくても借りにくい状況が、消費を慎重にさせているわけです。

タイの消費者トレンド① 「払う価値があるか」を厳しく見極める
家計に余裕がない中で、タイの消費者は単に安いものを選ぶのではなく、「この値段を払う価値があるか」を以前より厳しく見るようになっています。その変化がはっきり表れたのが、日本企業にもなじみの深い日本食市場です。
タイの日本食レストランが調査開始以来はじめて減少
JETROバンコク事務所が2026年1月に発表した「2025年度タイ国日本食レストラン調査」によると、2025年の店舗数は5,781店で、前年の5,916店から2.2%減りました。調査を始めてから初めての減少で、バンコク、近郊5県、地方のいずれでも店舗が減っています。

JETROは、タイの消費者の日本食に対する知識や経験が増え、市場が成熟段階に入ったとみています。「日本食である」というだけでは差別化になりにくくなり、産地や品質、背景にあるストーリーで店を選ぶ人が増えているそうです。
タイの消費者は専門性と体験に価値を見いだす
一方で、店舗数が増えた業態もあります。ラーメンは2.6%増、喫茶は6.4%増で、喫茶は抹茶ブームが出店を後押ししました。とんかつやハンバーグなどの専門店、日本産米にこだわる店への関心も高まっています。
興味深いのは、円安で日本を訪れるタイ人が増えた結果、おまかせ寿司や和牛、日本酒といった高級品は「本場の日本で味わいたい」と、タイ国内での消費を控える動きもあるという点です。
高級であることよりも、価格への納得感と、そこでしか得られない体験が選ばれる理由になっています。外食に限らず、タイ向けの商品やサービスを企画するうえでも参考になる視点といえるでしょう。
タイの消費者トレンド② 動画で見つけ、QRコードですぐ買う
支出には慎重になりながらも、買い物の手段そのものは急速に変わっています。タイは東南アジアの中でも、動画をきっかけにしたオンラインでの購買が特に盛んな市場です。
タイのEC市場を動画コマースが牽引
Google、Temasek、Bain & Companyによる年次報告書「e-Conomy SEA 2025」によると、東南アジアのEC流通総額のうち、動画コマースが占める割合は25%に達しました。
タイに目を向けると、EC市場は2025年に前年比22%増の330億ドルに達する見通しで、域内でもっとも速いペースで伸びています。動画プラットフォームで商品を売る事業者は前年から175%増えて85万に上り、東南アジアで最大の規模です。
ショート動画やライブ配信で商品を知り、コメント欄で質問し、その場で購入する。タイの消費者にとって、こうした流れは特別な体験ではなく、日常の買い物の一部になりつつあります。
タイの消費者の即時購買を支えるPromptPay
動画を見てすぐに買える背景には、決済インフラの存在があります。タイの即時決済システム「PromptPay(プロンプトペイ)」は、電話番号や国民ID、QRコードを使って、銀行口座から即座に送金や支払いができる仕組みです。
運営会社NITMXの発表によると、2026年8月の取引件数は25.3億件で前年同月比12%増、登録番号数は8,344万件に達しています。
屋台からショッピングモール、ライブ配信の購入画面まで同じ方法で支払えるため、「欲しい」と思ってから支払いを終えるまでの手間がほとんどありません。動画で関心を集める施策と、迷わず支払える導線をセットで考えることが、タイでは特に重要になります。

タイの消費者トレンド③ 健康は「特別な出費」から「毎日の習慣」へ
節約志向が強まる中でも、タイの消費者がお金をかけ続けている分野があります。その代表が健康です。PwCタイが2026年9月に発表した消費者調査から、その中身を見ていきます。
タイの消費者の8割が健康を意識した食品・飲料を購入
PwCタイの「Voice of the Consumer Survey 2026」(タイの回答者501人)によると、過去12カ月に健康を意識した食品や飲料を買った人は80%で、世界平均の35%の2倍を超えました。ビタミンやサプリメントを買った人は71%、日常的に摂っている人は79%に上ります。
関心は体の健康だけにとどまりません。長生きや全体的な健康の向上、ストレスの軽減とメンタルの安定(いずれも49%)、集中力など認知機能の向上(45%)が、上位の関心事として挙がっています。
タイの消費者は「安全だと言える根拠」を求めている
健康への関心が高まるほど、安全性を見る目も厳しくなります。同調査では、食品に含まれる化学物質や残留農薬を心配する人が91%、超加工食品を心配する人が87%に達しました。「体に良い」とうたうだけでは信頼されにくく、原材料の産地や製造工程、効果の根拠まで示せるかどうかが、選ばれる条件になりつつあります。
健康情報や助言を得るためにAIを使ったことがある人は63%に上ります。PwCは、こうしたサービスが広く受け入れられるかどうかは、データ保護や助言の信頼性にかかっていると指摘しています。

タイの消費者トレンド④ 高齢化で広がるシニア市場
中長期で見たとき、タイの消費をもっとも大きく変えるのは人口構成の変化です。「若い国」というイメージとは裏腹に、タイは東南アジアの中でも高齢化が早く進んでいる国です。
タイの60歳以上は人口の約2割に
タイ国家統計局によると、2025年の60歳以上の人口は1,468万人で、総人口の20.9%を占めます。そのうち働いている人は541万人で、高齢者全体の36.8%です。
在タイ日本国大使館の資料では、2025年の合計特殊出生率は0.93とされ、タイは人口減少の局面に入ったと整理されています。鳥取県東南アジアビューローの報告では、タイは2029年に超高齢社会へ移ると見込まれています。
所得と地域で分かれるタイのシニア消費者
ただし、シニア市場をひとまとまりで捉えるのは危険です。同ビューローの報告によると、バンコクなど都市部の富裕層・中間層は、医療や健康、生活の質への支出に前向きで、「安いから」より「安心だから」買う傾向がある層です。これに対して地方や一般的な所得の層では価格を重視する傾向が強く、高齢者本人よりも、介護を担う子ども世代の負担を軽くする商品に需要があるとしています。
同じ「高齢者向け」でも、誰がお金を出し、誰が使うのかによって、伝えるべき価値は変わってきます。

タイの消費者トレンドを事業の判断に生かす方法
ここまで見てきた統計は、市場の大きな流れをつかむうえで欠かせない材料です。ただし、自社の商品が実際に選ばれるかどうかまでは教えてくれません。トレンドを判断につなげるには、もう一歩踏み込む必要があります。
統計で仮説を立て、タイの消費者の声で確かめる
たとえば「タイでは健康志向が強い」という統計を見て、自社の健康食品も売れるはずだと考えたとします。ところが実際には、「価格が高すぎる」「味がタイの人の好みに合わない」「パッケージの表示が分かりにくい」といった、統計からは見えない理由で手に取ってもらえないことがあります。
そこで役に立つのが、統計で立てた仮説を、ターゲットとなる現地の消費者に直接聞いて確かめるステップです。購入の決め手、受け入れられる価格帯、普段使っている購入チャネル、広告表現の受け止め方などを事前に聞いておけば、進出や商品企画の判断の確度を上げられます。
現地の声を聞くのは、一度きりとは限りません。消費者トレンドを定期的に確かめたり、気になるテーマを手軽に試したりできるほか、たとえばパッケージ案を聞いた結果を受けて案を練り直し、次の検証に進むこともできます。
企画の段階で聞いて確かめることを重ねていけば、現地の消費者への理解が深まり、判断の精度も高まっていきます。

タイの消費者トレンドの市場調査には、ヒアリングプラットフォーム「ミルミー」をご活用ください
タイの消費者トレンドは、経済環境やSNSの流行によって短い期間で移り変わります。公的な統計で全体像を押さえたうえで、「自社の商品やサービスを、現地の人はどう受け止めるのか」を確かめたいときは、ヒアリングプラットフォーム「millme(ミルミー)」をご活用ください。
ミルミーでできること
ミルミーは、国内・タイ・ベトナム・インドネシアの現地の生活者に、自分で直接声を聞けるサービスです。AIが質問づくりをサポートするため、アンケートを作った経験がない方でも始められます。固定費0円で必要なときだけ使えるプランのほか、毎月定額で継続的に現地の声を集め、社内に判断材料をためていけるプランも用意されています。
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出典
- 外務省「タイ王国基礎データ」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/thailand/data.html
- タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)「Thai Economic Performance in Q2 and the Outlook for 2026」(2026年8月17日) https://www.nesdc.go.th/wp-content/uploads/2026/08/03-PRESS-EN-Q2-2026-Final.pdf
- Thairath English「NESDC Reports Thailand’s Q2 GDP Growth at 1.9% Despite Middle East Pressures, Projects 2.2% Growth for 2026」(2026年8月17日) https://en.thairath.co.th/news/politic/2953300
- The Nation「Thai consumer confidence index falls to 52.1 in September」(2026年10月8日) https://www.nationthailand.com/business/economy/40072005
- bdnews24.com(ロイター配信)「Thai household debt trap tests growth ambitions as Bangkok hosts IMF」(2026年10月8日) https://bdnews24.com/world/south-east-asia/sugno9youa
- 在タイ日本国大使館「タイ経済の現状と見通し」(内閣府経済社会総合研究所 景気懇談会2026資料、2026年2月26日) https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/workshop/forum/260226/pdf/260226_siryo04.pdf
- 日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所「2025年度タイの日本食レストランは5,781店舗 調査開始以来で初の減少」(2026年1月20日) https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/food/2025survey/20260120press.pdf
- 日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所「2024年のタイの日本食レストランは5,916店舗」(2025年1月8日) https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/food/2024Survey/20250108_press_jp.pdf
- Google、Temasek、Bain & Company「e-Conomy SEA 2025」 https://www.bain.com/insights/e-conomy-sea-2025/
- Khaosod English「New Google Thailand Chief Sees Strong Growth in Digital Economy」(2025年12月6日) https://www.khaosodenglish.com/news/business/2025/12/06/new-google-thailand-chief-sees-strong-growth-in-digital-economy/
- ข่าวสด(カオソッド)「NITMX เผยยอดใช้งานพร้อมเพย์เดือนมิ.ย. 2569」(2026年7月31日) https://www.khaosod.co.th/economics/news_10343138
- PwC Thailand「PwC: 80% of Thai consumers buy health-focused food and drinks while safety concerns reach 91%」(2026年9月10日) https://www.pwc.com/th/en/press-room/press-release/2026/press-release-10-09-26-en.html
- タイ国家統計局(NSO)「การทำงานของผู้สูงอายุในประเทศไทย พ.ศ. 2568(2025年 タイの高齢者の就労)」(2026年) https://www.nso.go.th/nsoweb/storage/survey_detail/2026/20260402160956_83051.pdf
- 鳥取県東南アジアビューロー「タイがむかえる超高齢化社会とシニア市場の可能性」(2026年3月) https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1148221/shakaidoukou202603.pdf
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