コラム
日本政策金融公庫の事業計画書|「販売先・ターゲット」欄を100人の回答で示した記入例
日本政策金融公庫の創業融資を申し込むとき、手が止まりやすいのが「販売ターゲット」と「販売先」の欄です。「30代の女性」「近くに住む人」と書いてはみたものの、本当にその人たちが買ってくれるのか、面談で理由を聞かれたら何と答えればいいのか。書いた本人がいちばん自信を持てない欄かもしれません。
それもそのはずで、まだ一人もお客さんがいない段階で「誰が買うのか」を説明しなければならないからです。
この記事では、日本政策金融公庫が公開している創業計画書の様式と記入例を確認したうえで、生活者100人の回答を使って「販売先・ターゲット」欄を書く方法を、記入例とあわせて紹介します。
日本政策金融公庫の事業計画書(創業計画書)の基本
日本政策金融公庫(以下、公庫)に創業融資を申し込むときの事業計画書は、公庫が用意している「創業計画書」という様式で作るのが一般的です。まずは、どんな項目があるのか、公庫がこの書類をどう使っているのかを押さえておきましょう。
日本政策金融公庫の事業計画書は10の項目でできている
公庫の「創業の手引」(2025年6月版)に載っている創業計画書は、「創業の動機」「経営者の略歴等」「取扱商品・サービス」「従業員」「取引先・取引関係等」「関連企業」「お借入の状況」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」「自由記述欄」の10項目でできています。
様式の冒頭には、面談の時間を短くするために使う書類であることや、自分で作った計画書を代わりに出してもよいことが書かれています。
つまり創業計画書は、面談の前に「どんな事業をするのか」を担当者と共有するための書類です。書いた内容はそのまま面談での質問につながるので、理由を説明できない一文があると、そこで答えに詰まってしまいます。

日本政策金融公庫の事業計画書で問われる「売れる根拠」
公庫の総合研究所が2025年8月に行った「2025年度新規開業実態調査」を見ると、開業時に苦労したことは「資金繰り、資金調達」(56.9%)が最も多く、「顧客・販路の開拓」(49.9%)が続きます。ところが、開業後に今苦労していることを聞くと順番が入れ替わり、「顧客・販路の開拓」が48.8%でトップになります。
「資金繰り、資金調達」は36.2%まで下がるのに、お客さん探しの悩みは開業時とほとんど変わらない水準のままです。
沖縄振興開発金融公庫が2026年3月に公表した、同公庫の取引先を対象にした調査でも、開業計画を「十分に検討できたと思う」と答えた事業者の82.5%が黒字基調で、計画を検討できた度合いが高いほど黒字基調の割合も高くなっています。
誰に売るのかを開業前にしっかり考えておくことは、審査のためだけでなく、開業後の自分を助けることにもつながると言えそうです。

日本政策金融公庫の事業計画書の書き方のポイント
「販売先・ターゲット」欄の話に入る前に、ほかの主な項目の書き方も簡単に押さえておきましょう。取扱商品・サービスと取引先の欄は、次の章で詳しく取り上げます。
1.事業計画書の「創業の動機」「経営者の略歴等」の書き方
創業の動機には、どんな目的やきっかけで事業を始めるのかを書きます。公庫の洋風居酒屋の記入例では、いくつもの店で経験を積み、店長として店の運営に自信がついたことに加えて、なじみのある地区で物件が見つかったことや、仕入れの条件が整ったことを理由に挙げています。
思いだけでなく「なぜ今、この場所で始められるのか」まで書くと伝わりやすくなります。経営者の略歴は、様式にもあるとおり、勤務先の名前だけでなく、担当した業務や役職、身につけた技能まで書くのがポイントです。
2.事業計画書の「必要な資金と調達方法」の書き方
必要な資金は、内装工事や設備にかかる「設備資金」と、仕入れや経費の支払いに使う「運転資金」に分けて書きます。記入例の欄外には、設備資金には見積書などを添付することや、必要な資金と調達方法の合計金額が一致することが書かれています。
自己資金や借入の内訳まで、合計がきちんと合っているかを最後に確かめておきましょう。
3.事業計画書の「事業の見通し」の書き方
事業の見通しには、「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」の2つの時点について、月平均の売上高、売上原価、経費、利益を書きます。
様式には、それぞれの数字をどう計算したのかを書く欄もあります。客単価×客数×営業日数のように計算式で示すと、数字の出どころがはっきりします。この売上の根拠は、後半で紹介する「100人の回答」とも深く関わってきます。
日本政策金融公庫の事業計画書で「販売先・ターゲット」を書く欄
「販売先」と「ターゲット」は、創業計画書の中で別々の欄に分かれています。どこに何を書くのかを先に整理しておくと、欄ごとに書いた内容が食い違うのを防げます。
1.事業計画書の「販売ターゲット・販売戦略(集客方法)」欄
項目3「取扱商品・サービス」の中にある欄です。同じ項目には「セールスポイント(自社の強み)」と「競合・市場など自社を取り巻く状況」の欄も並んでいます。ターゲットの欄には、誰に売るのか、そしてその人たちにどうやって知ってもらい、来てもらうのかを書きます。
この3つの欄は、セットで考えるとぐっと書きやすくなります。セールスポイントは「そのターゲットに選ばれる理由」、競合・市場は「そのターゲットが今どこで買っているか」と置き換えてみてください。3つの欄が、一人のお客さんを中心にした一つの話としてつながります。
2.事業計画書の「取引先・取引関係等」にある販売先欄
この販売先の欄は、項目9「事業の見通し(月平均)」ともつながっています。項目3で決めたターゲットが、項目5ではどんな形で支払うお客さんになるのか、そして項目9では1か月にどれくらいの売上になるのか、と3つの項目は同じお客さん像を順番に数字へ落とし込んでいく関係にあります。
たとえば、ターゲットが1回にいくら使い、月に何回来てくれるのかがわかれば、項目9の売上の根拠もそこから計算できます。

3.日本政策金融公庫の記入例に見るターゲットの書き方
公庫は、業種別に創業計画書の記入例を公開しています。2025年4月版の洋風居酒屋の記入例では、ターゲットは「30~40代の○○地区周辺の会社員」、集客方法は駅前でのチラシ配りやポスティング、インスタグラムなどのSNSへの料理写真の投稿です。販売先は一般個人で、現金が70%、クレジット・電子マネーが30%という内訳になっています。
ここで注目したいのは、売上の根拠です。客単価×席数×回転数×営業日数で月の売上を出し、原価率には「勤務時の経験から」と書き添えています。この記入例の人物は居酒屋で長く働き、店長も務めてきました。
これまでの経験が、そのまま数字の裏付けになっているのです。では、その業界で働いたことがない人や、経験はあっても新しい客層を狙う人は、何を根拠にすればよいのでしょうか。
日本政策金融公庫の事業計画書のターゲット欄でつまずく3つのパターン
根拠の集め方に入る前に、ターゲット欄でよくあるつまずき方を3つ見ておきます。どれも、書いている本人はなかなか気づけないものです。
1.事業計画書のターゲットを広げすぎている
「幅広い年代の方」「地域の皆さま」と書くと、誰にでも当てはまる代わりに、誰のためのお店なのかが見えなくなります。
集客方法も「チラシとSNS」のようにありきたりになりがちです。ターゲットを絞るといっても、ほかのお客さんを断るわけではありません。「まず確実に来てほしい人」を決めておく、ということです。
2.自分の感覚だけで事業計画書のターゲットを決めている
「自分が欲しいと思ったから、同世代の人も欲しいはず」という考えは、創業のきっかけとしてはごく自然なものです。ただ、面談で「なぜその人たちが買うと考えたのですか」と聞かれたときに、自分の感覚のほかに答えがないと、話が先に進みにくくなります。
3.事業計画書のターゲットと売上の数字がつながっていない
ターゲットの欄には「共働き世帯」と書いているのに、事業の見通しの客数や客単価は別のところから持ってきた数字、というケースです。ターゲットになる人がどれくらいの頻度で来て、1回にいくら使うのかがわかれば、ターゲットの欄と売上の根拠が同じ話になります。
日本政策金融公庫の事業計画書に使える「100人の回答」の集め方
3つのつまずきに共通しているのは、ターゲットについての「事実」が足りないことです。そこで役立つのが、実際に生活者に聞いた回答です。100人ほどの声でも、自分の思い込みと、実際のお客さんの姿を分けて考える材料になります。

1.事業計画書の欄ごとに聞くことを決める
質問は思いつくままに並べるのではなく、創業計画書のどの欄に使うのかを先に決めておくのがコツです。ターゲットの欄なら「利用する頻度と場面」、セールスポイントの欄なら「選ぶときに重視すること」、競合・市場の欄なら「今どこで買っているか」、集客方法なら「新しいお店を知るきっかけ」、事業の見通しなら「1回に使う金額」といった具合です。欄と質問が対応していれば、集まった回答をそのまま記入の根拠に使えます。
ちなみに、出店予定地にどれくらいの人が住んでいるかは、わざわざ聞かなくても公的な統計で調べられます。総務省統計局から令和7年国勢調査の結果が順次公表されていて、市区町村ごとの人口や世帯数を確認できます。地域の規模は統計で、買い方や好みは生活者の声で、と使い分けるとわかりやすいでしょう。

2.事業計画書に書く100人の回答は「傾向」として読む
100人の回答は、地域全体の需要をぴったり言い当てる数字ではありません。年代や家族構成で分けると1つのグループは数十人になり、数%の差は偶然かもしれません。
計画書に書くときは「半数を超える人が」「最も多かったのは」のように大きな傾向として使い、いつ、どんな人に、何人に聞いたのかを書き添えておくと安心です。面談で詳しく聞かれても、集計表を見せながら説明できます。
日本政策金融公庫の事業計画書「販売先・ターゲット」欄の記入例
ここからは、架空の例で書き方を見ていきます。〇〇駅の近くでテイクアウト中心のお惣菜屋さんを開く計画で、全国の生活者100人に惣菜・弁当の買い方を聞いた、という設定です。
1.事業計画書の根拠となる「100人の回答」の例
聞いたのは、購入する頻度、購入する時間帯、よく買う場所、店を選ぶときに重視すること、1回あたりの購入金額、新しいお店を知るきっかけの6つと、年代・世帯構成です。結果は、惣菜・弁当を週1回以上買う人が〇〇%で、買う時間帯は平日の夕方が最も多くなりました。店選びで重視することの上位は〇〇(〇〇%)と〇〇(〇〇%)で、1回あたりの購入金額は平均〇〇円でした。

2.事業計画書の「販売ターゲット・販売戦略(集客方法)」欄の記入例
回答を使う前と使った後で、書き方がどう変わるかを比べてみましょう。
回答を使う前:
・幅広い年代の地域住民がターゲット。
・チラシとSNSで集客する。
回答を使った後:
・〇〇駅周辺に住む、共働きの30〜40代世帯がメインターゲット。
・惣菜・弁当を週1回以上買う人は〇割で、購入は平日の夕方が最も多い。そのため、夕方に品ぞろえが最も充実するよう仕込みの時間を組む。
・店選びで重視する点は〇〇と〇〇が上位のため、この2点をセールスポイントとして打ち出す。
・新しい店を知るきっかけは〇〇が最も多いため、開店前から〇〇で告知する。
(根拠:全国の生活者100人への聞き取り、20〇〇年〇月実施)
使った後のほうは、ターゲット、選ばれる理由、集客方法のそれぞれに「なぜそう考えたのか」が添えられています。面談で質問されても、回答の数字に立ち返って説明できます。

3.事業計画書の項目5「取引先・取引関係等」と項目9「事業の見通し(月平均)」の記入例
項目5「取引先・取引関係等」の販売先の欄には、「一般個人(現金)」「一般個人(キャッシュレス)」のように支払い方法ごとに分けて書き、シェアと回収の条件を添えます。支払い方法も質問に入れておけば、キャッシュレスの割合を回答から見積もれます。
項目9「事業の見通し(月平均)」の欄では、売上の根拠を「客単価〇〇円(100人の回答の平均購入金額)×1日〇〇人×営業日数〇〇日」のように書きます。客単価がターゲットの回答から出ているので、ターゲットの欄と売上の根拠が一本の線でつながります。
「よく買う場所」の回答は、競合・市場の欄にも使えます。たとえばスーパーの惣菜売り場で買う人が多ければ、比べられる相手はほかのお惣菜屋さんよりもスーパーだと考えられます。
そこで、スーパーにはない品ぞろえや、帰宅時間に合わせた営業時間を打ち出せば、セールスポイントの欄も同じ回答の延長で書けます。ターゲット、セールスポイント、競合・市場、販売先、事業の見通しの5つの欄が同じ100人の声を土台にしていることから、欄同士の食い違いを面談で指摘されにくい計画書になると言えるのではないでしょうか。
日本政策金融公庫の事業計画書に生活者の声を活かすなら、ヒアリングプラットフォーム「ミルミー」をご活用ください
事業計画書のターゲット欄に説得力を持たせるいちばんの近道は、開業前に生活者の声を聞いておくことです。
とはいえ、まだお店もお客さんもない段階で、100人に答えてもらう相手を自分で集めるのは簡単ではありません。 ミルミーを使えば、回答してくれる相手を自分で探さなくても、生活者に直接質問を届けられます。回答するのは、日本とタイ・ベトナム・インドネシアの約3,600万人のモニター、つまり実際に暮らしている生活者です。
AIがつくった回答ではなく、本物の人の声を集められるので、事業計画書の根拠としても自信を持って使えます。以下は、ミルミーでタイに住む大人約100人に「日本旅行や日本の商品」について聞いたときの回答画面です。日本に行った回数や旅行先としての日本のイメージ、日本の商品を選ぶときの決め手などを質問したもので、選択肢ごとの人数や割合がグラフでひと目でわかる形にまとまります。
この記事で紹介した惣菜店の例とはテーマが異なりますが、ターゲット欄に使う質問でも、同じように回答を集めて傾向をつかめます。
事業計画書のターゲット欄に使えるヒアリング項目の例
自社の商品やサービスが売れるかどうかを確かめたいときは、創業計画書のどの欄に使うのかを決めてから質問を用意すると、回答をそのまま根拠として書き込めます。業種を問わず使いやすいヒアリング項目の例をまとめました。
| 創業計画書の欄 | ヒアリング項目の例 |
|---|---|
| 販売ターゲット | 〇〇(商品のジャンル)をどのくらいの頻度で利用しますか |
| 販売ターゲット | 〇〇をどんな場面で利用しますか |
| セールスポイント | 〇〇を選ぶとき、決め手になるものをすべて選んでください |
| セールスポイント | 今使っている〇〇に、不満や物足りなさはありますか |
| 競合・市場 | 〇〇を普段どこで購入(利用)していますか |
| 販売戦略(集客方法) | 新しいお店や商品を知るきっかけになる媒体をすべて選んでください |
| 事業の見通し | 〇〇に1回あたりいくらまでなら払えますか |
| 回答者の属性 | 年代、性別、住んでいる地域、世帯構成 |
ミルミーでできること
millme(ミルミー)は、国内とタイ・ベトナム・インドネシアの生活者に、自分で直接声を聞けるヒアリングプラットフォームです。「何を聞けばいいかわからない」という場合も、AIが質問づくりをサポートします。
創業計画書の欄に合わせて質問を用意すれば、集まった声をターゲットやセールスポイント、売上の根拠を書く材料として活かせます。アカウント登録は無料で行えるため、ご登録ください。
▼ ミルミーの登録はこちら
https://millme.ai/signup
出典
- 日本政策金融公庫「創業の手引(2025年6月)」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_tebiki202506_01.pdf - 日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei01_250401c.pdf - 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」ニュースリリース(2025年12月5日)
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_251205.pdf - 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」本文
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf - 沖縄振興開発金融公庫「沖縄公庫取引先からみた新規開業の現状2025」(2026年3月12日)
https://www.okinawakouko.go.jp/userfiles/files/news_release/2025/20260312_kisyahappyou.pdf - 総務省統計局「令和7年国勢調査 調査の結果」
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/kekka.html
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