コラム
顧客満足度の測り方5選|自社の顧客と市場の声を比べてギャップを知る
「うちのお客さんは満足してくれている」。そう言い切れる根拠は何でしょうか。クレームが少ない、常連さんが多い、店頭アンケートの点数が高い。どれも大切な手がかりですが、自社の顧客だけに聞いた声には、どうしても映らない部分があります。
人手も予算も限られる中小企業にとって、顧客が離れる理由を後から知るのは痛手です。新しい顧客を一人増やす手間を考えると、今いる顧客の満足度を正しくつかみ、手を打てるかどうかは売上に直結する問題です。
本記事では、顧客満足度の基本的な考え方を整理したうえで、中小企業でも取り入れやすい顧客満足度の測り方を5つ紹介し、あわせて自社の顧客だけで測ったときに見落としやすい「市場とのギャップ」と、その確かめ方を解説します。

顧客満足度を測る前に押さえておきたい3つのポイント
顧客満足度は「お客さんが満足しているかどうか」という感覚的な言葉として使われがちです。しかし規格や国内の調査では、もう一歩踏み込んだ定義と測り方が示されています。まずは顧客満足度の意味と、測るときに押さえておきたい点を確認します。
顧客満足度の定義は日本産業規格で示されている
品質マネジメントの用語を定めた日本産業規格JIS Q 9000:2015では、顧客満足を「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方」と定義しています。
基準になるのは商品の性能や仕様ではなく、顧客が事前に抱いていた期待です。同じサービスでも、期待が高い人ほど満足しにくくなります。なお、もとになる国際規格ISO 9000は2026年5月に改訂版が発行され、JISも改正作業が進められています。
顧客満足度を測る仕組みづくりについては、国際規格ISO 10004:2018が監視・測定のプロセスを定めるための指針をまとめています。組織の種類や規模を問わず使える指針とされており、中小企業も対象に含まれます。
顧客満足度はクレームの少なさでは測れない
JIS Q 9000の定義には、苦情は満足度が低いことを示す一般的なサインではあるものの、苦情がないからといって満足度が高いとは限らない、という注記があります。このことは、消費者の実際の行動からも読み取れます。
消費者庁の「令和8年版消費者白書」によると、2025年度の消費者意識基本調査で、この1年間に購入した商品や利用したサービスで被害やトラブルを経験した人は20.1%でした。その中には「品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」という、顧客満足度に直結する経験も含まれています。
トラブル事例のうち、誰かに相談や申出をしたのは36.1%にとどまり、誰にも相談・申出をしていない事例は42.6%にのぼりました。相談した相手は家族や知人などの身近な人(39.8%)が最も多く、メーカーなどの提供元の事業者は35.6%、販売店や代理店などは19.7%でした。トラブル事例全体に置き直して試算すると、メーカーなどの提供元に申し出があったのは約13%です。販売店や代理店への申出と重なりがないと仮定して足し合わせても、約2割にとどまります。
同じ調査では、「商品やサービスに問題があれば事業者に申立てを行う」ことを心掛けている人も48.1%と、半数を下回りました。クレームが少ないことを満足の証拠とせず、自社から顧客に聞きにいく必要があるといえます。
顧客満足度は推奨意向やロイヤルティとあわせて見る
顧客満足度を測る国内の代表的な調査に、「JCSI(日本版顧客満足度指数)」があります。JCSIは、スーパーや銀行、旅行会社などのサービスを実際に利用した人に、その企業やブランドへの満足度を聞く調査です。
公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が行っていて、結果は業種をまたいで比べられる点数で公表されています。
2026年度は年5回に分けて、回ごとに異なる業種を調べています。点数は顧客満足だけでなく、顧客期待、知覚品質、知覚価値、推奨意向、ロイヤルティ、感動指標、失望指標、CSR指標を加えた9つの指標で出されています。
このうち基本となる6つの指標は、利用前から利用後までの流れで捉えられます。顧客期待、知覚品質、知覚価値が満足の原因側にあたり、それらが顧客満足につながり、その結果として推奨意向とロイヤルティが生まれる、という考え方です。
満足の点数だけでなく、手前にある「期待」と、その先にある「行動」まで追うと、数字の意味が読み取りやすくなります。
JCSIでは、顧客満足の結果として表れるものを、「推奨意向」と「ロイヤルティ」の2つの指標で見ています。推奨意向は、利用して感じたうれしさや楽しさを人にどれくらい話したくなるかを、ロイヤルティは、今後もその企業やブランドを利用し続けたいかを表しています。
「不満はない」と「誰かに話したくなる」「また利用したい」の間には意外と大きな差があり、口コミや紹介、リピートにつながっていくのは後者のほうです。

顧客満足度の測り方5選
顧客満足度の測り方にはいくつかの方法があり、それぞれでわかることが異なります。ここでは、中小企業でも取り入れやすい代表的な5つの方法を紹介します。
一つの方法に頼るのではなく、目的に合わせて組み合わせることで、顧客の受け止め方をより立体的につかめます。
1.顧客満足度アンケートで満足の度合いを点数で聞く
最も基本になるのが、顧客に満足の度合いを段階で答えてもらうアンケートです。「どれくらい満足しているか」を5段階や10段階で聞けば、結果を点数として比べられます。先に紹介したJCSIでは、満足を一問だけで聞かず、全体としての満足、利用したことが良い選択だったか、生活を豊かにすることに役立っているか、という3つの設問を組み合わせて点数を出しています。
一つの設問だけでは回答がぶれやすいため、角度を変えた設問を組み合わせると、満足度を安定して測れます。
2.NPSで顧客満足度を「人に勧めたいか」から測る
NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、「友人や同僚にどれくらい勧めたいか」を0から10の11段階で聞く方法です。9〜10点を「推奨者」、7〜8点を「中立者」、0〜6点を「批判者」に分け、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数字をスコアとします。
満足しているかどうかだけでなく、口コミや紹介につながる状態にあるかを確かめられるのが特長です。設問が一つで済むため、会計後の店頭アンケートなどにも組み込みやすい方法です。
3.インタビューや自由回答で顧客満足度の理由を聞く
点数だけでは、なぜその評価になったのかまではわかりません。満足や不満の理由を知りたいときは、顧客に直接話を聞くインタビューや、アンケートの自由回答欄が役立ちます。「どんなときに当店を選びますか」「期待と違った点はありますか」のように聞くと、点数の裏にある具体的な場面が見えてきます。
多くの数を集めるのは難しいものの、改善のヒントを得やすい方法です。
4.苦情や問い合わせ、口コミから顧客満足度の手がかりを集める
日々寄せられる苦情や問い合わせ、レビューサイトの口コミも、顧客満足度を知る手がかりになります。内容を「品質」「接客」「価格」などに分けて記録しておくと、不満が集まりやすい点が見えてきます。
ただし、先に見たように、トラブルがあっても事業者に伝える人は多くありません。苦情が少ないことを満足の証拠とせず、ほかの方法と組み合わせて使うことが大切です。
5.リピート率など利用の記録から顧客満足度を読み取る
顧客満足度は、顧客の行動にも表れます。再来店や再購入の割合、定期契約の継続率、会員の利用頻度などは、満足度と深く関わる数字です。JCSIでも、今後も使い続けたいかを表す「ロイヤルティ」を指標の一つにしています。
こうした記録は、アンケートのように答えてもらう手間がかからない一方で、数字が下がった理由まではわかりません。アンケートやインタビューと合わせて見ることで、変化の原因を探りやすくなります。

顧客満足度を自社だけで測ると見落とす、市場とのギャップ
ここまで紹介した5つの測り方は、いずれも自社の顧客から声や記録を集める方法です。自社を選んでくれた顧客の声はとても大切な情報ですが、それだけでは、市場全体から見て自社がどう受け止められているのかまではわかりません。
ここでは、市場と比べることで見えてくるものを整理します。
自社の顧客満足度が高いのか低いのか
自社で測った顧客満足度が80点だったとしても、それが高いのか低いのかは、比べる相手がいなければ判断できません。JCSIは業種をまたいで同じ設問で調べているため、他社や業界の水準と並べて見ることができます。
2026年度第3回調査では、約10.1万人に利用経験を尋ねたうえで条件に合う人に評価を聞き、6業種・76の企業・ブランドを対象としています。順位に含める企業・ブランドは、それぞれ300人以上の回答を確保しています。回答が数人ずつでは偶然の差と本当の差を見分けにくいため、比べる集団ごとにある程度まとまった数の回答を集めることが大切です。
公表されている数値を見ると、2026年度の旅行業種で顧客満足1位となったHISのスコアは77.1でした。業種のトップでも70点台という水準です。自社アンケートで「満足」「やや満足」を選んだ人が8割を超えていても、それを業界の物差しと同じものとして扱うことはできません。
「満足度は高いのに売上が伸びない」というときは、比較の物差しが欠けていることを疑ってみる価値があります。

顧客と市場で重視することの共通点と違い
顧客満足が「期待」を基準にしている以上、自社の顧客が何を期待しているかと、市場全体が何を期待しているかを比べることには大きな意味があります。自社の顧客は、自社の強みに惹かれて選んでくれた人たちです。そのため、自社の顧客だけに「何を重視するか」を聞くと、自社の強みがそのまま上位に並びやすくなります。
たとえば地域の飲食店で、常連客は「味」や「店主との会話」を重視している一方、市場全体では「価格」や「一人でも入りやすいか」が上位に来る、ということもありえます。両方が重視している項目は、その業態で外せない基本です。自社の顧客だけが特に重視している項目は、自社が選ばれている理由といえます。市場全体では重視されているのに自社の顧客の回答には出てこない項目は、まだ応えきれていない期待である可能性があります。
比べるときは順位だけでなく、項目ごとに「重視する」と答えた人の割合の差を見ると、違いの大きさがつかみやすくなります。差が大きい項目ほど、自社の顧客と市場で期待がずれている部分です。
このように共通点と違いを読み分けることで、守るべき強みと、新しい顧客を迎えるために手を入れるべき点を切り分けられます。

中小企業が顧客満足度調査を進める流れ
自社の顧客と市場を比べるといっても、大企業のような大規模調査が必要なわけではありません。手順を押さえれば、中小企業でも無理のない範囲で取り組めます。ここでは全体の流れを整理します。

顧客満足度調査で知りたいことを一つに絞る
「全体的な満足度を知りたい」から始めると、設問が増えるうえ、結果を何に使うのかが曖昧になります。「リピートが減った理由を知りたい」「値上げ後の受け止め方を知りたい」のように、答えを出したい問いを一つ決めてから設問を考えると、結果を改善策に結びつけやすくなります。
顧客満足度の設問を自社の顧客と市場で共通にする
比べるためには、同じ設問を同じ回答形式で聞くことが前提です。JCSIでは顧客満足を、全体としてどの程度満足しているか、利用したことが良い選択だったか、生活を豊かにすることに役立っているか、という3つの設問で測り、設問を原則10段階(ロイヤルティのみ7段階)で聞いて100点満点に換算しています。自社の調査でも、段階の数をそろえておけば比較がしやすくなります。
ただし市場の生活者には、自社の利用を前提にした聞き方はできません。まず「普段、〇〇(業態)はどこを利用しているか」を聞き、そのうえで「そこにどれくらい満足しているか」を尋ねます。どこを利用しているかがわかれば、満足度の点数を、競合店や業態全体の水準として読み取ることもできます。一方で「〇〇を選ぶときに重視すること」のような設問は、自社の顧客にも市場の生活者にも、そのまま同じ形で聞けます。

自社の顧客には自社で、市場の生活者には外部で聞く
自社の顧客には、店頭アンケートやメールで送るフォームなど、自社の接点を使って聞きます。設問を必要なものに絞り、名前を書かずに答えられるようにしておくと、回答の負担が減ります。「期待と違った点があれば教えてください」のような自由回答の欄を設けておけば、先に見たように普段は事業者に伝えられない不満も拾いやすくなります。
一方、市場の生活者には自社から連絡する手段がないため、生活者に声を聞ける外部のサービスを使うことになります。聞くときは、比べたい業態や商品のジャンルを決めたうえで、自社の顧客に聞いた設問と同じ形で尋ねます。
顧客満足度の共通点と違いを読み解いて改善につなげる
結果がそろったら、満足度の水準と、重視することの共通点と違いを並べて見ます。評価の低かった項目のうち、自社の顧客と市場の両方が重視しているものから手をつけると、限られた人手でも効果の出やすい改善になります。
市場全体だけが重視している項目は、すぐに手をつけるかどうかも含めて、自社の方針に照らして判断します。すべての期待に応えようとすると、かえって自社の強みがぼやけることもあるためです。結果は経営者だけで抱えず、現場のスタッフとも共有しましょう。
顧客の期待は時間とともに変わります。改善策を打った後は、自社のアンケートで同じ設問を使い、顧客の評価がどう変わったかを確かめます。こうして続けていくことで、顧客満足度は経営判断の材料として使える数字になっていきます。
顧客満足度の把握や市場調査には、ヒアリングプラットフォーム「ミルミー」をご活用ください
自社の顧客の声は自社で集められても、市場の生活者に聞くために、外部の会社へ大がかりな調査を依頼するのは、予算の面でも時間の面でも負担が大きくなります。市場の生活者が何を求めているのかを手軽に確かめたいときは、ヒアリングプラットフォーム「millme(ミルミー)」をご活用ください。
ミルミーでできること
ミルミーは、日本国内とタイ・ベトナム・インドネシアの生活者に、直接声を聞けるサービスです。AIが質問づくりをサポートするため、アンケートを作った経験がない方でも始められます。自社のアンケートと同じ設問を生活者にも聞けば、自社の顧客と市場全体で、重視していることの共通点や違いを確かめられます。
▼ ミルミーの無料会員登録はこちら
https://millme.ai/signup
出典
- 国際標準化機構(ISO)「ISO 10004:2018 Quality management — Customer satisfaction — Guidelines for monitoring and measuring」
https://www.iso.org/standard/71582.html - 国際標準化機構(ISO)「ISO 9000:2026 Quality management — Fundamentals and vocabulary」
https://www.iso.org/standard/88465.html - 一般財団法人日本規格協会「ISO 9000ファミリー規格の開発状況」
https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/dev/md_6912.pdf - 日本産業標準調査会(JISC)「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本及び用語」(JIS検索で閲覧可)
https://www.jisc.go.jp/ - 消費者庁「令和8年版消費者白書」第1部第1章第4節、第2章第1節(2026年6月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/assets/consumer_research_cms201_260612_31.pdf - 公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会「2026年度JCSI(日本版顧客満足度指数)第3回調査結果発表」(2026年9月15日)
https://kyodonewsprwire.jp/release/202609115768 - 公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会「2026年度JCSI第3回調査 詳細資料」
https://cdn.kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M106914/202609115768/_prw_PA1fl_kimlo9rN.pdf - Bain & Company「Measuring Your Net Promoter Score」
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