アンケートで得られる顧客データの統合が、カスタマーデータプラットフォームの組織的活用を加速する
One to Oneマーケティングが注目される一方で、どのようにOne to Oneマーケティングを実現していくか、そのためにCDP(カスタマーデータプラットフォーム)をどのように活用していくべきかを悩まれている担当者は少なくありません。
また、マーケティングリサーチを行ってはいるものの、得られたアンケートデータをCDPシステムと連携し、データ活用に展開していくというところまで実現できている企業はそう多くはないのではないでしょうか?
そうした中、モニタスが提供する『スパコロ』は、自社の顧客データとアンケートデータを自社会員IDで連携、既存データだけでは把握できない顧客像を捉え、理想のOne to Oneマーケティング実現が可能です。
そしてこのたび、スパコロアドバイザーとしてモニタス顧問に重原洋祐氏が就任。CDP領域において豊富な知見を持つ重原氏の参画により、企業におけるスパコロ活用の最大化に取り組んでまいります。
そこで今回はモニタス 代表取締役社長を務める林 秀紀が、重原氏とともに日本国内におけるCDP活用の現状や課題、またマーケティングリサーチとCDPの未来について語り合いました。
企業のCDPやデータ活用を推進するためには、外部パートナーとしてビジネス支援の領域まで踏み込む必要があった
林:まずは重原さんのこれまでのキャリア遍歴、そしてハイブアイキューを立ち上げた経緯について教えていただけますか?重原:2002年にデジタルアドバタイジングコンソーシアム(株)へ入社しまして、メディアバイイングやサービス立ち上げ等を経験した後に、サードパーティデータを収集したDMPの開発や運営に携わっていました。それがデータまわりのケイパビリティのスタートでしたね。
ただ、当時思っていたのは「データの活用はやはり難しい」ということ。いまだにお客様からも難しいという反応をいただきますし、「よくわからない」ということでプロジェクトがふわっとした感じで終わってしまうこともしばしば。
このままでは国内でのデータ活用が進んでいかないと感じ、企業のデータ活用支援をやるべきだと思い、独立。(株)Legolissという会社を数名で立ち上げ、私は主にCDPの導入支援や導入コンサルなどを行ってきました。
そしてトレジャーデータのCDP導入支援も行っていたのですが、当時はCDPの重要性が少しずつ認知されていて、大手エージェンシーやコンサル会社がCDPを入れ始めようとしているタイミングでした。
その後、トレジャーデータに入社してからは、CDPの利活用支援やコンサルティング事業の立ち上げ、またカスタマーサクセスチームの責任者などを務めてきました。そしてCDP導入企業が増えていく中、ふたたびジレンマを感じるようになっていきます。
CDPを活用しようにも、そもそもデータの使い先が幅広いため、データ活用自体が満足いくレベルでできていないという企業がまだまだいらっしゃいました。
ベンダーとしてCDP活用を支援できるものの、そうした企業の課題を解決するためにはツールのサポートを超えて、むしろデータを活用したビジネス支援の領域に踏み込んでいかないといけないなと。
そこで、ベンダーという立場ではなく、ふたたび外部のパートナーとしてお客様のデータ活用支援を行うべく、独立してハイブアイキューを立ち上げたというのが経緯でした。
林:データ活用ができていない企業も多いということですが、具体的にどういったことが課題となっているケースが多いのでしょうか?
重原:まず、昨今のCookie規制によって外部データが使いづらくなっているというのがあります。大手プラットフォーマーが提供するデータクリーンルームのような仕組みも増えておりますが、そうした新たな仕組みをベースとしたアプローチが必要になっています。
また、そもそも自社データを保有していないという企業も多くいらっしゃいます。たとえば耐久消費財などは事前に顧客がWebで情報収集をしたりするため、ユーザーデータが揃いやすい。しかし、一般消費財などは事前に調べたりしないことが多いですよね。
つまり、リテールは購買データを持っていたりするものの、意外とメーカーなどはユーザーデータを集めにくいということが課題でもあります。
そこで、自社データを保有していない企業に対して、使い方によっては外部データの活用が価値になってくると考えていた中で、モニタスと出会いました。モニタスが提供する『スパコロ』はアンケートを通じて自社会員の色付けが可能であるため、そうした調査データは従来までのサードパーティデータよりも活用の幅は広いだろうと感じました。
さらにモニタスのクライアントにはCDPを導入している企業も多いということで、調査データを組み合わせていくとCDPの活用というのが広がっていくのではと思ったのが今回のアドバイザーを務めさせていただくキッカケでした。
[スパコロで取得したアンケート回答データのCDP連携イメージ]
外部データの活用だけでなく、アンケート調査で得られた自社会員データをCDPと紐づけていくことが成果最大化のカギ
林:重原さんとの出会いは、共通の知人からのご紹介でしたね。そしてモニタスの変革を実現するためにも、ぜひ重原さんにはアドバイザーとしてお力添えいただきたいと当初から強く思っていました。なぜなら、企業におけるマーケティングの初動アクションとして、アンケート調査で得られたユーザーデータをCDPで整理されたデータに紐づけして “使えるデータ” にすることが大切であり、そのためにはCDP領域の知見が求められるからです。
一般的な調査会社の場合、ユーザーデータを保有していませんから、どれだけ調査をしてデータを保有していようが、ユーザーデータとの紐づけができません。しかし、スパコロはお客様のCDPシステムと連携することができるため、お客様の自社会員に対して重み付けをしていくことで、One to Oneマーケティングでのデータ活用が実現できます。
ただ、マーケティングリサーチとCDPという領域の違いから、CDPにはCDPならではビジネスのやり方があるだろうと。そうした知見が我々にはなかったため、重原さんにご相談させていただきました。
重原:外部データの活用ニーズはあるものの、私個人としてはいきなり外部データを紐付けることは難しいと考える部分もありました。せっかく自社会員がいるにも関わらず、外部データを活用していきたいというお声もあったりするのですが、まずは自社会員の色付けをしたほうが成果に繋がると思っていたんですね。
そのときにわかりやすいのが自社会員に対してのアンケート調査で、スパコロであればそうした自社会員の色付けができるため、CDP活用とのシナジーがありそうだと感じました。もちろんアンケート調査は定性的なデータもあるものの、まだまだそうしたデータを活用し切れていない事業者は多いため、ここを推し進めていったら面白そうだなと。
そして、こうしたCDP活用の流れは世界的にも起きており、米国などでは日本よりも進んでいる一方、これからCDPを使っていこうとしている国は多いのが現状です。
そこで私もマレーシアに拠点を持つADAの日本のカントリーマネージャーも務めていますが、モニタスもベトナム展開されていて、こうしたデータ活用のビジネスの広がりを世界的に進めていけるだろうと感じています。
林:また、私たちが課題に感じているのはマーケティングリサーチというものがマーケティングDXの中で優先順位が高くないということです。マーケティングDXの市場感として、いまはCDPでデータを整備する領域から成長していると感じています。
背景には、マーケティングリサーチの市場はある意味で方法論が確立してしまい、企業側も “とりえあずインターネット調査をやる” といった具合で習慣化しているので、一度イノベーションが起きた領域であるということ。
さらに調査会社からは調査レポートというパワポ資料が納品されるわけですが、それは人が介在することで、要点が整理される側面もありますが、調査したデジタルデータをオフライン化してしまうため、よりマーケティングDXの文脈からマーケティングリサーチが離れていってしまっていると考えています。
そこで、これまでの専門家が介して要点を整理していくパターンに加えて、調査結果を自動で収集してわかりやすくビジュアライズしていくなど、人間が介在しないモデルも使い分けできるようにしていくべきだと考えています。
そうしてマーケティングリサーチのあり方自体も変わっていいのではということが、スパコロの概念でもあります。ただ、マーケティングリサーチとCDPのデータを結合して活用しているというケースは、まだそう多くはありません。その要因について、重原さんはどのようにお考えですか?
重原:理由はいくつかあり、ひとつは企業の中でCDPを使っている部門とマーケティングリサーチをやっている部門が違うことが多いということが原因であったりします。つまり、そもそも企業内部でマーケティングリサーチとそれ以外が分断されていたりするんですね。
そしてもうひとつの理由は、国内でCDP活用の文化が成熟し切っていないということ。年々CDP導入企業は増えているものの、いきなり様々なことをやろうとすると混乱が生まれてしまいかねません。そのため、1つずつできることを広げていくという形で、いまはようやくCDPのデータを店舗で活用していこうといった広がりが出てきたというフェーズです。
もちろんマーケティングリサーチのデータを掛け合わせている企業もいますが、多くの企業はまだそこまでやる体制ができていないというのが実状なのだと思っています。
自社のビジネスにどうCDPを活用していくか、組織としてのアプローチが求められている
林:そうしたマーケティングリサーチとCDPの現状に対して、私はCDP領域からイノベーションが起こるだろうと勝手に考えていまして、だからこそ “CDP領域の方々と一緒にどうマーケティングリサーチを最適化していくか” ということが大切なのかなと思っているのですが、重原さんはいかがですか?重原:私は逆で、マーケティングリサーチの領域から変化が生まれるのかなと考えているんですね。特にデータ活用の重要性がより理解されていったときに、リサーチャーの仕事というのが変わってくると思っていますし、「CDPを使いたい」というリサーチャーの方が増えてほしいと思っています。
やはり、企業においてもデータを活用する人材が増えなければ、CDPの利活用は増えていきません。そのため、当然ながら最終的にデータを活用できる人材は増えたほうが良いわけですし、「こういうデータの使い方ができる」ということを私自身が橋渡しをしていき、広がりを作っていければと考えています。
林:リサーチャーの仕事が変わっていくというのはその通りですね。私たちが目指しているように、マーケティングリサーチにおいて人が介在しないモデルを確立していったとき、リサーチャーの仕事というのは、リサーチのその先をやっていく必要があるわけで、つまりデータを見れるようになることが必然と求められていきますね。
重原:きっとリサーチャーというポジションの人たちは、今後マーケティングアナリストになっていくのだと思っていますし、本来そうあるべきです。そしてリサーチャーはアンケートを実施して分析をしてきた人たちなわけですから、その人たちがCDPに触れて、使えるデータを使うことで、よりビジネスの成果に繋がる分析ができてくるのだと考えています。
しかし、CDP活用を行う企業側の体制は十分とは言えないと思っています。その結果、効果が出ずにCDP活用プロジェクトが停滞してしまうケースも往々にして起こりえます。
CDPをしっかりと活用していくためには、自社のビジネスでどうデータを活用していくかと組織としてアプローチを変える必要があり、そうした状況を私としては支援していき、変えていきたいと思っています。
林:この20年間、マーケティングリサーチの領域はほぼ大きな変化がない状況でした。しかし、マーケティングリサーチ自体はすごく重要な意味があるものだと私は考えているため、マーケティングリサーチのあり方をいまの時代に変化させ続け、消費者の声を集め続ける状況をいかにつくるかが重要です。
これからも重原さんと一緒に、ぜひマーケティングリサーチのあり方を変化させていき、マーケティングDXにフィットする形に変え、さらにそれを日本のモデルとして東南アジア等にも出ていき、発展の商圏を広げていきたいと考えています。
重原:マーケティングリサーチはまだ様々な可能性があると思っています。たとえば調査結果を機械学習にも使えるでしょう。テレビの視聴率がランダムに選んだ世帯の視聴データから類推しているように、インターネット調査からどういった嗜好があるのかなどを類推することもできるわけです。
100万UUあるサイトで10万人が自社会員の場合、残りの90万人を “よくわからないユーザー” にしておくのではなく、そうしたマーケティングリサーチと機械学習を掛け合わえることで、90万人に対しても何かしらアプローチできるようになるなど、活用の幅を広げていくことができるのです。
ユーザーボイスとして調査結果を商品開発などに活用するだけでなく、いままでアプローチしていなかった領域にもマーケティングリサーチを転用していくことができると思っているので、そうしたことをぜひやっていきたいですね。
■本件に関するお問い合わせ先
株式会社モニタス
広報担当 info@monitas.co.jp